蔵王山麓ゆるく往く

旅行やメカを中心に、私の気に入ったモノや事のべた褒めレビューを書き殴ります。

気仙沼湾横断橋開通! …の裏、唐桑半島ICのBefore & After

令和2年3月6日、気仙沼湾横断橋「かなえおおはし」開通―――!

これと前後区間のオープンをもって、「三陸自動車道(三陸道)」が全線開通となりました。 

気仙沼湾横断橋 かなえおおはし

2020/12/13 筆者撮影、大島大橋も絡めて。開通前ですが。。。

松島の市街地をバイパスする仙台松島道路に始まり、今や三陸沿岸の交通ネットワークの基幹にして復興道路 “三陸沿岸道路” を構成する高規格道路となった「三陸自動車道」。今回の開通により、仙台から石巻気仙沼陸前高田~大船渡~釜石を通って宮古まで*1、一本の高速道路で結ばれました!

 

私も開通当日に早速走ってきました。

本記事はその「かなえおおはし」走行記…
と行きたいところですが、今回私が見てみたかったのは、その橋の区間よりも北に進んだ先 “今回開通区間と既供用区間との接続部分” です。 

ここでは道路の切替が行われたのですが、果たして出来たてホヤホヤの「改良“跡”」は見られるでしょうか??

久々の「道路改良跡シリーズ」として走行記&図上解説をお伝えします。

 

 

 

「唐桑半島IC」と気仙沼道路(気仙沼湾横断橋)と唐桑道路 ~予習兼解説

気仙沼湾横断橋を挟む区間は、それ単独での道路名は「気仙沼道路」といいます。そのうち横断橋と、それより北の区間が今回開通したわけです。

 

さて、気仙沼道路の北端の接続点から先は既に、自動車専用道路「唐桑道路」として供用されていました。
気仙沼道路も唐桑道路も、三陸道を構成する自動車専用道路のひとつです*2


唐桑道路は、その南端の唐桑南ICに始まり、「只越大橋」と「霧立トンネル」を順に通って「唐桑小原木IC」まで。この区間は平成22年開通と、三陸道の中では比較的早くの開通でした。


唐桑道路の開通時の「唐桑南IC」は、一般道(国道45号*3 )気仙沼方面⇔唐桑道路(三陸道)陸前高田方面が本線、一般道(R45)気仙沼方面⇔一般道唐桑方面が分岐するハーフインターチェンジ*4でした。

 

気仙沼道路の開通により、道路の切替と共に唐桑南ICは「唐桑半島IC」と名称が変更されました。

もっとも切替前後の共通点は、同じ位置にあることと、ランプが流用されたこと程度で、乗り降りできる方向はまるで変わっています。
ざっくり言えば、唐桑南IC時代に対し唐桑半島ICは、一般道(R45)唐桑方面⇔三陸気仙沼方面のみ行き来できるハーフICとなりました。

 

そんな唐桑半島ICについて予習したところでは、こんな感じでした。

 

…へ?唐桑半島IC出口こんなところに付くの??

f:id:zaoukama:20210313145521p:plain

仙台河川国道事務所の『記者発表資料』より。2021/3/13閲覧。
下段の左から3番目「③唐桑半島IC(出口)」の図を見て膝を打ちました。

 

ここでちょっと 解説 兼 用語の定義 を。

まず、高速道路は概ね、
 上り線入口ランプ→Aランプ  上り線出口ランプ→Bランプ
 下り線入口ランプ→Cランプ  下り線出口ランプ→Dランプ
というふうに呼びます。

AランプとDランプはそれぞれ、今回開通後の出入り口ですね。すなわち、
 唐桑半島IC 出口・・・Dランプ
 唐桑半島IC 入口・・・Aランプ

そして開通前(唐桑南IC時代)の状態を、上の定義からは少々外れますが便宜上
 唐桑南IC 一般道(R45)気仙沼方面→一般道(R45)唐桑方面・・・Bランプ
 唐桑南IC 一般道(R45)唐桑方面→一般道(R45)気仙沼方面・・・Cランプ
と、本記事では呼ぶこととします。

 

国土地理院の オタク向けコンテンツ 電子国土webで見てみましょう。

唐桑南IC 空撮
唐桑半島IC 地図
左が唐桑南IC時代の空中写真。右は唐桑半島ICへ切替後の地図。写真クリックで拡大推奨。
地理院地図 電子国土web
より(左リンクで地図そのものを出せます。)

Bランプは1車線一方通行だったものが拡幅(?)され、気仙沼⇔唐桑方面両方向対面通行として一般道(R45)の本線に転用されるようです。
Cランプは途中まで線形ほぼそのままに、その合流先が一般道(R45)から三陸道上り本線へと付け替えられ、Aランプになるみたいです。

唐桑半島IC 前後比較

旧線形の空撮と現在の地図を重ねて。こちらをご覧いただければ説明不要でしょう。
電子国土webのサイト上で、このように合成表示ができてしまいます*5

 

…とまあここまでは予想通り。ここからは、私は想像していなかった内容です。
色々と事前にリリースもあったらしいが、私が大してアンテナを張ってなかったがために…

まずDランプ。これはてっきり、R45は平面交差によって、旧・Bランプにつながるものと予想していました。しかし実際はちょっと意外で、先述の通りトンネルの手前に作ってしまわれました。

そしてもう一つは、他ならぬ “三陸道 本線” 。これには、当日の走行で「見てしまって」謎のテンションにさせられました。

 

気仙沼湾横断橋~唐桑半島IC ミニ走行記

それでは、当日の走行記を交えて。。。
(本項の写真はすべて 2020/3/6 撮影。)

 

気仙沼湾横断橋 開通当日

2021/3/6 同乗者撮影(筆者により一部画像加工)。

見物による大渋滞を何とか通り抜け、横断橋を走破。

 

f:id:zaoukama:20210320232413j:plain
f:id:zaoukama:20210320223534j:plain

左:唐桑半島IC出口は、トンネル出口手前から減速車線がスタート。(同乗者撮影)
右:出口ランプ。左手の橋はR45を跨ぐもの。(筆者撮影の車載動画より切り出し)

Dランプを通ってみたいという予定通り、唐桑半島ICで流出。

 

ラグナ・セカのコークスクリューの鏡写しみたいなランプを下りR45に合流。

f:id:zaoukama:20210320225438j:plain
f:id:zaoukama:20210320225504j:plain
左:唐桑半島IC Dランプ R45跨道橋から下道に合流する区間。奥に見えるのがR45唐桑トンネル。(同乗者撮影)
右:唐桑トンネルを抜けた先。旧 唐桑南ICの位置。右手の空間がかつてのCランプ部。その奥の車列は三陸道本線の渋滞。(筆者撮影の車載動画より切り出し)

下道の唐桑トンネルを通過。かつては、そのまま直線的に唐桑道路へと進めましたが、先述の通り、元・Cランプの方へしか行けなくなっていました。

f:id:zaoukama:20210320232807j:plain
f:id:zaoukama:20210320232815j:plain
左:中央線の消去痕がうっすら見えてます。(筆者撮影の車載動画より切り出し、右も同じ)
右:旧Bランプの拡幅がよく分かる舗装継目*6。ってあれ、なんか三陸道に違和感が…

舗装継目と、それから中央線消去跡を確認。これをもって「道路改良“跡”」ノルマ達成! ということにしといてください。
って言っとかないと、どちらかというと「道路改良なう」な記事になっちゃう…*7

右隣には、同一地平面上で三陸道の本線が走ります。上り線の見物渋滞がこんなところまで伸びていました… 帰りにこの区間を走るのはこの時点で諦めました。Aランプとか新・本線とかはまたの機会にしましょう。

 

唐桑トンネルから唐桑半島方面へは高低差があるので、ヘアピンカーブを交えての急坂で下ります。ここは以前から変わらず。
慣れた道のヘアピンを抜けて… と惰性で走っていたところでしたが、ちらっと唐桑道路の橋を見上げてビックリ。

只越大橋 架替え ベント
左:R45→Aランプ入口を反対車線から。(筆者撮影の車載動画より切り出し、右も同じ)
右:左写真奥のヘアピンを曲がり切った先。やはりさっきの違和感は見間違いではなかった!三陸道本線の橋(只越大橋)の隣にもう1本の桁が!!

この橋が「只越大橋」なのですが、どういうわけか大掛かりなベント*8が組み立てられていて、そしてその上にもうひとつ桁が乗っかってる??!!!!?

拡幅すんの?まさかの4車線化?? とか同乗者とあ~だこ~だ色々言い合いました。

 

その先の観光Pで転回し、帰りは気仙沼市街を経由して、仙台方面へ戻りました。

唐桑半島IC(下り)~旧 唐桑南IC部~只越大橋 の区間が今回未踏で残りました。
三陸沿岸道路全通の折にまとめて走るでもしましょうか。。。

唐桑半島IC 机上復習

さて、先の桁をはじめとする「唐桑南IC→唐桑半島IC の大改造」の真相は、実はしっかり事前にリリースが出ていました。

仙台河川国道事務所のプレスリリース(2020/3/20閲覧。掲載元はこちら)

掲載元のPDFには、特に「もう一つの橋桁」の真相がすべて書かれたチラシが添付されていました。こちらは転載を控えますのでご自身で閲覧願います。

つまり、只越大橋の元々の線形はカーブしていて、三陸道方面へまっすぐ伸ばすためには、直線的な線形の桁に架けかえる必要があったのです。

それで何をしたかというと、
 ①架替え部分にベントを組む。
 ②ベント上で、供用中の旧桁の隣に新桁を組み立てる。
 ③三陸道を通行止めにする。
 ④旧桁を切断し、奥へスライドしてどかす。
 ⑤新桁をスライドし、正しい位置に据え付ける。
 ⑥桁を接続し、路面の舗装など仕上げをする。
 ⑦新線形で供用!

ということです。

以上が、先の掲載元PDFには図入り解説されています。簡潔明瞭かつ大変ためになる資料ですので御覧ください!  色々と余裕ができたら自分でも図起こししてみようと思います…

ちょうどここで、気仙沼道路の建設真っ最中の写真がありました。

只越大橋 唐桑南IC 唐桑半島IC 改良前
唐桑南IC 唐桑半島IC 新唐桑トンネル 改良前
ともに 2019/3/10 筆者撮影。霧立トンネル→只越大橋を気仙沼方向に走行中の2枚。
ロードスター旅行のときに助手席から撮影したもので、ブレはご容赦を。

真っ直ぐ前に見えるのが建設中の新唐桑トンネルです。

当時は右カーブの先が、下道の唐桑トンネルに直通していました。「自動車専用道路ここまで」の標識の位置が、その接続点の「唐桑南IC」です。
また、2枚目写真で先行車のミニバンが差し掛かっている、コンクリート高欄*9の端までが只越大橋です。橋桁の右カーブが大変分かりやすいかと思います。

 

そして、空中写真も復習してみましょう。

只越大橋 架替え 比較

最新地図との合成より。写真の旧桁と、地図の新線形の差が分かります。

写真は旧桁時代のもので、黄色カーブ内でカーブしているのが分かるかと思います。対して、新線形は地図(合成写真上では線で描かれているのが見えるかと)の通り真っ直ぐ。
 

 

…さて、Dランプの線形については、先述のように最初は、こんな感じかなと想像してました。R45接続部は信号丁字路とするような感じで。

これでは、信号機を設置したならば登り坂右急カーブの先に信号という、なかなかのバッドコンディションとなっていましたね。

信号の見通しは予告信号で何とかなるとしても、信号待ち車の再発進は、例えば路面凍結時にはなかなか厳しいものとなっていたでしょう。

唐桑半島IC 全景地図

地理院地図 電子国土webより。IC出口(Dランプ)はこんなところに。。。

そういう意味では、唐桑トンネル手前に立体交差のできる場所を見出したのは理にかなっています。Dランプ→R45接続部の急な下り坂も大概でしょうけど、まあマシだと踏んだのでしょうね。

 

まとめ …と言うほどでもない感想

唐桑道路は開通当初から地図上で見慣れており、同時に、そこから気仙沼方面へは三陸道としてどう延伸していくのかはずっと疑問でした。

当時は、今のR45気仙沼バイパスを改良して高速道路に仕立てるのでは?とも思っていたくらいです。

時は流れ、気仙沼湾横断橋の建設が公表され、それからしばらくしてトンネル坑口も形が見えてきたタイミングーーー。

改めて地図と航空写真を見て、どうするんだろうなーと考える毎日でした。

唐桑道路⇔新トンネルとストレートに繋げ、BランプはAランプに転用するとして、じゃ唐桑半島→R45はどうすんの?新トンネル→唐桑半島はどうすんの?

ずっと謎でした。。。

 

唐桑南IC時代から、極めて狭い所に分岐点を作ったもんだなと思っていました。

Dランプを唐桑トンネルよりも気仙沼側に作るのは予想外でした。

 

最後に一言。

 

2019年3月に…

上でも写真使いましたが、こんなことして遊んでましたね。

 

そのときにですね、撮ってあったんですよ。さて、何の写真でしょう???

唐桑半島IC Dランプ 建設中

2019/3/10 筆者撮影。ブレてますが、看板になんて書いてあるかしっかり分かりますね。

【こたえ】( ↓ 反転で答えと解説 ↓ )
唐桑半島IC Dランプ建設現場。
唐桑方面→気仙沼市街方面へ走行中に撮影。白布の掛かった足場の中で橋台を建設している時期であったとみられる。前方頭上にこのあと橋が掛かる。
反対車線脇の斜面が後に切り開かれてランプの下り坂になるのかな。

( ↑ 反転ここまで ↑ )

 

正解発表とかそういう話以前に、答えを目撃してたんじゃん。

なぜ忘れてたし

*1:公的文書でまとめて “三陸沿岸道路” と称される 仙台~三陸沿岸~八戸 の高速道路のうち、看板に「三陸道」と書かれるのが 仙台~宮古区間。その先 宮古~久慈~八戸 の区間も、未開通区間はわずかを残すのみとなっています。

*2:ざっくり言うと、概念として上位から「復興道路」>「三陸道」>「気仙沼道路」や「唐桑道路」という感じでどんどん細分化されていくイメージ。ご存知でない方向けに本文中でどう掲載するかは毎度悩みどころです…

*3:以下、国道45号は「R45」と呼ぶ

*4:片方向のみ行き来できるインターチェンジ。略してハーフIC

*5:数年前にリリースされた機能ですが、まさしく納税者たる日本国民(大きな主語)が本当に必要としていたものです…(???)

*6:拡幅とかしたからって舗装全面打ち替えすることは滅多になく、むしろ、10数年後の世の中においても改良跡探求の手がかりになることが多い

*7:実際そのとおりである。

*8:橋桁の組み立てに使う仮台

*9:橋の欄干のことを、土木用語では「高欄」といいます。